坂本龍一プロデュース/編曲作品集

大貫妙子『SUNSHOWER』, 1977年

大貫のセカンドアルバム.坂本はこの作品が初プロデュース作品.全曲編曲を担当している.
drはクリス・パーカーが担当している.

「都会」はマーヴィン・ゲイの「what's going on」を知っているとより楽しめる.
細野晴臣の立ち上がりの遅いベースのグルーヴがゆったりと心地良い

大貫妙子『MIGNONNE』, 1978年

大貫の3rdアルバム.
坂本プロデュース.全曲編曲
昔よくみた包茎手術の広告とよく似たアートワークだ.まさかこれから着想を得ただろうか
タイトルの読みはミニヨン… 意味深だ.
中身は名曲・名録音だらけの素晴らしいアルバム.
大貫の文語的な情景描写のセンスの良さと,イジらしい心理描写はクセになる.

「4:00 A.M」はラテンなソウル曲.前作の「都会」を越えようと意気込みがあったのだろうか.見事に成功している.
坂本のピアノには,ラテンのノリとジョビン的なミニマルな美しさが同居している.
ジョビン研究はこの頃には形を伴っていたことがわかる演奏.そしてこんなにピアノ弾けたのか…

「突然の贈り物」は松木恒秀のギターが歌っている.この人はこの時期大活躍していたスタジオミュージシャンのようだ.
のちにトゥーツ・シールマンスと共作を出している.
歌詞の「あなたの気まぐれにつき合った仲でしょ」というのはドキッというかゾッとするというか,同棲ブームの時代の面影があるセリフだ.
邪推だが,坂本はこのときの演奏の雰囲気を,「The Other Side of Love」の佐橋佳幸ギターで出そうとしたのかなと思ったり.

「海と少年」は,歌詞の持つ力がとても強い曲.
小川未明の同タイトルの短編と関係あるだろうか.青空文庫にあるので読んでみてほしい
小川未明『海と少年』
ただ,大貫の海の描写は小川未明よりもヘミングウェイにずっと近い.焼けた肌に染みる潮風や,海と溶ける太陽など.
いや,ボードレールやランボーのような雰囲気もあるなぁ.
ハープやシンセで海の乱反射が表現されているように感じる.涼しげな夏の海の雰囲気も伝わってくる.何度聴いても素晴らしい.
マッキーとあっちゃん(矢野顕子)と大貫3人で歌っているものも存在する.こちらは随分と愉快な演奏だが,大貫の声がより澄んでいる.

大貫妙子『ROMANTIQUE』, 1980年

3rdアルバム.
意外なことに前作が売れなかったということで方向転換してテクノポップ路線.
テクノにも良し悪しはあるが,このアルバムは今聴くと時代の変化に耐えられず正直ダサく聴こえる部分も多い.生音のほうが心地よかった.

以上